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売上目標に近づくほどしんどくなる|その数字の代償を書き出し、引き受けない仕事を一つ決める

切りのいい売上目標を立てて走ってきたのに、達成に近づくほど毎日がしんどくなる。目標には、達成したときに増える仕事という代償があります。「その数字はどこから出てきたか」を問い直し、働き方のゴールから逆算して目標を置き直す。そのうえで、増える仕事の中から「引き受けない仕事」を一つ先に決める手順を、少人数の会社の社長・個人事業主向けに整理します。後半では、特典を足しても上位プランが選ばれないときの見直し方にも触れます。

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木の机でカエルが、売上目標の紙の横に「増える仕事」のカードを並べ、その中の一枚に「引き受けない」と書いて脇へよけているイラスト
カテゴリAI経営
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更新日2026/10/20
QUICK ANSWER

先に結論

切りのいい売上目標を立てて走ってきたのに、達成に近づくほど毎日がしんどくなる。目標には、達成したときに増える仕事という代償があります。「その数字はどこから出てきたか」を問い直し、働き方のゴールから逆算して目標を置き直す。そのうえで、増える仕事の中から「引き受けない仕事」を一つ先に決める手順を、少人数の会社の社長・個人事業主向けに整理します。後半では、特典を足しても上位プランが選ばれないときの見直し方にも触れます。

年の初めに、切りのいい売上目標を立てる。去年より少し大きく、周りの社長と話しても恥ずかしくない数字にする。そこに向けて走ってきて、数字はたしかに近づいている。それなのに、近づくほど毎日がしんどくなっていく。人を採り、会議が増え、確認しなければならないことが増え、自分がやりたかった仕事の時間がどんどん減っていく。少人数の会社の社長や個人事業主の方から、よく聞く悩みです。

結論から先に書きます。達成に近づくほどしんどくなるとき、足りないのは頑張りや体力ではなく、目標を決めるときに、その数字の代償を見ていなかったことであることが多いと考えています。目標には、達成したときに増える仕事という代償が必ずついてきます。やることは、次の3つです。

  1. 「その数字はどこから出てきたか」を問い直す(切りがいいから、周りがそう言うから、になっていないか)
  2. 働き方のゴールから逆算して、目標を置き直す(会社の数字は最後に決める)
  3. 達成したら増える仕事を書き出し、引き受けない仕事を一つ先に決める(それでも目標が成り立つかを確かめる)

かえるちゃんが、売上目標の紙を見て、ぽつりと聞くことがあります。「この数字になったら、社長の一日はどう変わるの?」——本稿は、この問いから始めます。

売上目標の決め方|一般的に言われていること

まず一般論です。売上目標の決め方としては、よく次のようなやり方が挙がります。

  • 去年の実績に、伸ばしたい割合を上乗せする
  • 業界や同規模の会社の数字を参考にする
  • 必要な利益から、逆に売上を計算する
  • 目標を月ごと、商品ごとに分ける
  • 少し背伸びした、切りのいい数字にして、やる気を高める

どれも役に立つ考え方です。とくに、目標を分けて毎月の数字に落とすことは、どの会社にも必要です。

ただ、ここで一つ引っかかるのは、どのやり方も「数字をどう決めるか」の話で、「その数字になったとき、自分の働き方がどうなるか」までは見ていないという点です。数字の決め方は丁寧なのに、達成したあとの毎日のことは、ほとんど考えられていません。

違和感|目標には、達成したときに増える仕事という代償がある

売上が増えると、たいてい次のようなものも一緒に増えます。

  • 採用:人を探し、面接し、迎え入れる仕事
  • マネジメント:人に任せ、進み具合を見て、困りごとを聞く仕事
  • 会議:情報をそろえ、決めごとをするための時間
  • 確認と責任:自分が直接やらない仕事にも、最後は自分が責任を持つこと

どれも悪いものではありません。ただ、社長がもともと好きだった仕事、たとえばお客さまと直接話すことや、ものを作ることとは、まったく別の仕事であることが多いのです。売上目標を追いかけるうちに、一番やりたくなかった仕事で一日が埋まっていた、ということが起こります。

もう一つ見落としやすいのが、数字がどこから来たかです。切りがいいから、去年より大きくしたいから、周りの社長がそのくらいだから。こうして決めた数字は、決めた理由が自分の外にあります。外から借りてきた数字に、自分の時間や家族との時間、住む場所や付き合う人まで合わせていくと、いつの間にか、会社は人生のための手段だったはずが、数字そのものが目的になってしまいます。

行き先を決めずに、とりあえず一番速い電車に乗るようなものかもしれません。速く進んでいる手ごたえはあっても、降りたい駅を通り過ぎていることに、なかなか気づけません。

見方数字から決めた目標働き方から逆算した目標
出発点切りのいい数字、去年の実績、周りの数字どう働きたいか、何をやりたくないか
決める順番会社の数字 → やること → 自分の働き方自分の働き方 → 必要な条件 → 会社の数字
達成に近づくとやりたくない仕事が増えていく増える仕事を、先に選んである
達成したあと「次はもっと大きく」になりやすい「この形を続ける」と言いやすい

KAKUKATA視点|目標は、働き方のゴールから逆算して置く

ここからは、林英明が自分の会社の目標を考えるときに、いま試している順番です。決まった正解としてではなく、試しながら整えている途中の考え方として書きます。

前に書いた頑張っているのに会社が伸びないでは、目標を「誰が払い、誰が喜ぶか」から立て直す話をしました。あちらは、目標がお客さまにとって意味のある数字かを問う話です。本稿はその反対側で、その目標を達成したとき、自分は何を引き受け、何を手放すのかを問う話です。二つをそろえると、お客さまにも自分にも無理のない目標になります。

1. 働き方のゴールを先に決める

最初に、会社の都合を一度わきに置いて、自分がどう働きたいかを書きます。

  • いまのような働き方を、いつまで続けたいか
  • 一週間のうち、どのくらい働きたいか
  • どんな仕事は続けたくて、どんな仕事はやりたくないか
  • どこで、誰と働きたいか

ここでは、「会社のためにはこうあるべき」という考えは入れません。正直に書くほど、あとの数字がぶれにくくなります。

2. その働き方に必要な条件を、数字にする

次に、その働き方を実現するのに必要な条件を、数字にします。暮らしにいくら必要か、会社にどのくらいのお金が残ればよいか、自分は何時間くらい現場に立てばよいか、いつまでに仕組みで回るようにしたいか。

この段階の数字は、まだ会社の売上目標ではありません。自分の働き方のための数字です。意外なことに、この数字を一度も書いたことがない社長の方は少なくありません。

3. 最後に、会社の目標を決める

そのうえで、ようやく会社の目標を決めます。その働き方を実現するのに必要な売上と利益はどのくらいか、どんな組織が必要か、何を捨てるか。

こうして逆算すると、目標の数字が、いまより大きくなることもあれば、小さくなることもあります。どちらでもかまいません。大事なのは、その数字がどこから出てきたかを、自分の言葉で説明できることです。

4. 増える仕事の中から、引き受けない仕事を一つ決める

目標を置き直したら、もう一歩だけ進めます。その目標を達成したときに増える仕事を書き出し、その中から引き受けない仕事を一つだけ、先に決めます。

何をやるかを決めるのと同じくらい、何をやらないかを決めることは大切です。引き受けない仕事を決めると、目標の代償がはっきり見えます。そして、「それを引き受けずに、目標は成り立つか」を確かめることになります。成り立たないなら、変えるのは自分の働き方ではなく、目標の側です。

KAKUKATAでは、「型に投資して、回り続ける仕組みを残す」ことを大事にしています。引き受けない仕事を決めることは、この考え方とよくつながります。自分が引き受けない仕事は、型にして人やAIに任せるか、そもそもなくすか、どちらかを考えることになるからです。人を増やす前に、仕事の流れそのものを組み替える考え方は、人を増やさずに一人あたりの売上の天井を外す考え方にも書いています。時間を売る形から、相手に残る形で価値を届ける考え方は、伴走を「週○回」で売ると天井に当たるにまとめています。

実務|今週やること:目標の代償を書き出し、引き受けない仕事を一つ決める

新しい道具は使いません。紙1枚か、メモ1つで十分です。

  1. いまの売上目標を、そのまま書く:いつも頭にある数字をそのまま書きます。
  2. 「その数字はどこから出てきたか」を一行で書く:切りがいいから、去年より大きくしたいから、でもかまいません。正直に書きます。
  3. 働き方のゴールを書く:会社の都合を考えずに、どう働きたいか、何をやりたくないかを書きます。
  4. その働き方に必要な条件を書く:暮らしに必要なお金、会社に残したいお金、自分が現場に立つ時間などを書きます。
  5. 目標を達成したら増える仕事を書き出す:採用、マネジメント、会議、確認、責任など、思いつくだけ並べます。
  6. 一番やりたくない仕事に印をつける:書き出した中から、一つだけ選びます。
  7. 引き受けない仕事を一つ決め、目標が成り立つかを一行で確かめる:成り立たないなら、目標の数字か、達成の仕方を見直します。

書き出しのイメージです。以下は例です。

項目(例)書く内容(例)
いまの目標来年の売上を、切りのいい〇〇にしたい
数字の出どころ去年より大きくしたかった。周りの社長もそのくらいだった
働き方のゴールお客さまと直接話す仕事は続けたい。夜の会議はしたくない
必要な条件暮らしと会社の備えに〇〇が残ればよい
増える仕事採用、新しい人の教育、毎週の進み具合の会議、確認の承認
一番やりたくない仕事毎週の進み具合の会議
引き受けない仕事進み具合は会議ではなく、短い書面とAIの要約で共有する
目標は成り立つか成り立つ。ただし採用の人数は抑え、仕事の流れを先に整える

AIは、増える仕事を書き出すときの抜けもれ探しや、引き受けない仕事を型にして任せる手順の下書きで手伝ってもらいやすい部分です。一方で、どう働きたいか、何を引き受けないかは、社長自身が決めることです。

よくあるつまずき

  • 働き方のゴールを書くつもりが、会社の都合で書いてしまう
  • 増える仕事を書き出したところで怖くなり、目標そのものを考えるのをやめてしまう
  • 引き受けない仕事を一度にいくつも決めて、どれも守れなくなる
  • 目標が成り立たないと分かったのに、自分の働き方のほうを削って合わせてしまう
  • 引き受けない仕事を決めたのに、誰にもどうやって任せるかを決めていない

特典を足しても上位プランが売れないとき

最後に、目標を追いかける中でよく出てくる、もう一つの悩みに触れておきます。売上を伸ばそうとして、上位のプランに特典を足していく。それでも、上位を選ぶお客さまがなかなか増えない、という悩みです。

ここで起きやすいのが、売り手が価値だと思う特典と、買い手が欲しいものがずれていることです。売り手は、個別の相談の回数を増やす、限定の集まりに招く、資料を豪華にする、といった特典を足しがちです。でも買い手は、時間をかけずに済むこと、自分の状況に合わせた答えがもらえること、社内に説明しやすいことのほうを望んでいるかもしれません。売り手にとってうれしい特典が、買い手には負担に見えることもあります。

見直すときは、次の2つを試しています。

  • 上位を選ばなかったお客さまに、一つだけ聞く:「何があれば、上位を選びましたか」。理由を詳しく聞き出すより、この一問だけのほうが、答えてもらいやすくなります。
  • 入口のメニューを体験したあとに、もう一度案内する:最初の案内で上位を選ばなかったお客さまも、入口のメニューで中身を知ったあとなら、上位の価値を自分のこととして想像しやすくなります。上位の案内は、最初の一回きりにしなくてかまいません。

お客さまに作る前に選んでもらう考え方は、作る前にお客さまに選んでもらうにまとめています。上位プランの中身を見直すときにも、同じ手順が使えます。

よくある質問

会社を大きくしないほうがよい、ということですか?

そうではありません。働き方のゴールから逆算した結果、会社を大きくするほうがよいと分かることもあります。大事なのは、大きくするかどうかを決める前に、その代償を見ておくことです。代償を分かったうえで引き受けるなら、それは自分で選んだ目標になります。

切りのいい数字を目標にするのは、だめですか?

だめではありません。ただ、その数字がどこから出てきたかを、自分の言葉で説明できるかを確かめてみてください。説明できるなら、切りがよくてもかまいません。説明できないなら、働き方のゴールから逆算して、一度置き直してみることをおすすめします。

引き受けない仕事を決めても、結局だれかがやらなければなりません。

その通りです。だからこそ、引き受けない仕事は、型にして人やAIに任せるか、そもそもなくせないかを考えるきっかけになります。任せる先も、なくす方法も見つからないなら、その仕事が生まれない形で目標を達成できないかを考えます。それでも難しければ、目標の側を見直します。

起業したばかりで、やりたくない仕事も全部自分でやるしかありません。

始めたばかりの時期は、やりたくない仕事も自分で引き受けることが多いものです。それでかまいません。ただ、その時期のうちに「いずれ引き受けない仕事」を一つ決めておくと、どの仕事から型にしていくかの順番が見えやすくなります。

「誰を幸せにする目標か」を決める話とは、どう違いますか?

頑張っているのに会社が伸びないは、目標がお客さまにとって意味のある数字かを問う話です。本稿は、その目標を達成したとき、自分が何を引き受け、何を手放すのかを問う話です。お客さまの側と自分の側、両方から目標を確かめる、という組み合わせで使っていただくと考えやすくなります。

まとめ|次に決めること

売上目標に近づくほどしんどくなるときの論点は、頑張りの量ではなく、その数字の代償を見て決めたかどうかです。目標には、達成したときに増える仕事がついてきます。だから、「その数字はどこから出てきたか」を問い直し、働き方のゴールから逆算して目標を置き直す。そのうえで、引き受けない仕事を一つ先に決め、それでも目標が成り立つかを確かめる。この順番で考えます。

  • いまの売上目標が「どこから出てきたか」を、一行で書けるか
  • 目標を達成したら増える仕事を書き出し、一番やりたくないものに印をつけられるか
  • 引き受けない仕事を一つ決め、それでも目標が成り立つかを確かめられるか

この3つが決まると、「数字には近づいているのに、毎日がしんどい」状態から、「自分で選んだ代償を引き受けながら、目標に向かっている」状態へ近づきやすくなります。まずは今日、いまの目標の横に「この数字はどこから出てきたか」を一行書くところからで十分です。

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型を手に入れる。あるいは、共に超える。