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税理士の守秘義務とAI|顧問先資料を入れる前に決めること

税理士の守秘義務とAIを両立させるには、顧問先の個人情報を外部AIに出す仕事と所内だけで扱う仕事に分けることが先です。税理士法38条・個人情報保護法・TKC方針と、TeamプランとローカルLLMの使い分けを整理します。

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カテゴリAI活用・業務効率化
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更新日2026/9/14
QUICK ANSWER

先に結論

税理士の守秘義務とAIを両立させるには、顧問先の個人情報を外部AIに出す仕事と所内だけで扱う仕事に分けることが先です。税理士法38条・個人情報保護法・TKC方針と、TeamプランとローカルLLMの使い分けを整理します。

顧問先の通帳、源泉、給与、個人事業主の氏名住所を、ChatGPTに貼ってよいか。税理士の守秘義務と、個人情報保護法の両方で止まるのがここです。

この記事で分かることは4つです。税理士法38条と個人情報は別の軸であること。Teamプランとマスキングで足りる仕事があること。それでも原本を外に出したくない仕事は所内の作業台に残すこと。その作業台を動かすPCは、普段の業務ノートではなく専用機の水準で見ること。

本稿は法的助言ではありません。事務所の方針は、所属団体と専門家の確認を前提にしてください。

結論:先に分けるのは「どの個人情報を、どこで扱うか」

税理士の守秘義務とAIを両立させる最初の仕事は、仕訳の自動化ではありません。顧問先の個人情報を、外部のAIに出す仕事と、所内だけで扱う仕事に分けることです。

上位記事の答えは、おおむね次で止まります。個人版ChatGPTには入れない。Teamプラン以上にする。氏名やマイナンバーは伏せる。これは必要な下限です。足りないのは、通帳PDFや残高証明書のように、伏せると仕事にならない資料をどうするか、です。

ローカルLLM(所内のPCで動かすAI)は、その残った仕事のための作業台です。自前の会計モデルを学習することではありません。

税理士法38条と個人情報保護法は、別の軸で見る

税理士法38条は、業務上知り得た秘密を、正当な理由なく漏らし、または窃用してはならない、と定めています。顧問先が法人でも、売上構成、未公開の決算、取引先との条件は秘密になり得ます。

個人情報保護法は、それとは別に動きます。顧問先が法人でも、次は個人情報です。

  • 個人事業主の氏名、住所、家族構成
  • 役員・従業員の氏名、給与、源泉
  • マイナンバー、口座番号、本人確認書類
  • 相続や譲渡で出てくる親族の情報

クラウドのAIにこれらを入れると、個人情報保護法上は少なくとも次を確認する必要があります。

  1. 第27条(第三者提供): 個人データを第三者に渡すときは、原則として本人の同意が要ります。個人情報保護委員会のQ7-53は、クラウド利用が第三者提供や委託になるかは「データが入っているか」ではなく、提供事業者が個人データを取り扱うこととなっているかで見ると整理しています。出典: PPC Q7-53
  2. 第28条(外国にある第三者への提供): 海外の事業者へ個人データを渡すときは、同意や基準適合など、別の確認が要ります。ChatGPTなど海外拠点のサービスでは、ここが残ります。
  3. 生成AIへの入力: 個人情報保護委員会は2023年6月2日、本人同意なく個人データをプロンプトに入れ、応答以外の目的(機械学習など)で扱われる場合は、個人情報保護法違反になり得ると注意喚起しています。出典: 生成AIサービスの利用に関する注意喚起

「学習オフにしたから安心」は、27条・28条の全部を消しません。データが社外のサーバーを通る事実は残ります。TKC全国会が同意と通知を必須に置いているのは、この重ねです。

TKC全国会が事務所に求めていること

TKC全国会は2026年6月3日、AI活用の基本方針を出しました。関与先の同意を得ること、出力の最終判断は税理士が行うこと、利用状況を見える化すること、の3つです。

顧問契約への絶対的記載事項として、次も求めています。

  • 個人情報保護法第27条第1項の同意取得(原則)
  • 同意が難しい関与先への通知(同条第2項)
  • 個人情報保護方針へのAI利用の追加
  • 顧問契約書の改定

根拠として、税理士法38条・54条・41条の2と、個人情報保護法27条・28条を並べています。出典: TKCニュースリリース

事務所のルールは、この4点を先に満たしてから、ツールを選ぶ順が安全です。

ChatGPTに入れてよい個人情報、入れてはいけない個人情報

判定は「特定できるか」と「原本が要るか」の2軸です。Teamプランでも、原本のアップロードは避けた方がよい、というのが現場の実務です。

入力個人版Team以上所内のローカルLLM理由
一般的な税制・通達(顧問先情報なし)個人情報でも秘密でもない
社名と数字を外した論点整理条件付き組み合わせで再識別されないこと
顧問先メールの添削(氏名・案件名あり)不可注意向きやすい個人情報と秘密が同時に入る
通帳・残高証明書・源泉のPDF不可避ける向きやすい伏せると突合にならない
マイナンバーの入った書類不可不可扱うなら所内ルール必須番号法の論点も残る。原則入れない

マスキングは有効ですが、万能ではありません。地域、業種、決算月、特徴的な数字が揃うと、名前を消しても特定できます。個人情報を「少し薄めた」だけでは、27条の確認は終わりません。

Teamプランで足りる仕事、所内に残す仕事

外に出してよい仕事まで、所内LLMに寄せる必要はありません。公開済みの費用記事と同じ分岐です。社外に出してよいか、が最初の問いです。

Teamプランとマスキングで足りることが多い仕事

  • 一般的な条文の整理
  • 社名を外したメール文案
  • 公開情報だけのリサーチ
  • ExcelやVBAの書き方

所内に残した方がよい仕事

  • 通帳、残高証明書、証憑フォルダの突合
  • 源泉、給与、マイナンバー周辺の書類整理
  • 顧問先が特定できる照会文の下書き
  • 所員が個人アカウントで貼りがちなシャドーAIの受け皿

ローカルLLMは、後者のための閉じた作業台です。精度でChatGPTに勝つための箱ではありません。KAKUKATAのローカルLLM導入支援も、売るのはAI本体ではなく、外に出せない資料の作業台、と置いています。会計・税務の現場で「自分の仕事を題材に、同じ相手と続きから相談する」形の実例は、会計・税務のAI顧問導入事例にもあります。

ローカルLLMを動かすPCのレベル

所内で個人情報を扱うなら、会計ソフトが入っている普段のノートに、そのまま載せる前提では考えません。専用機を1台置き、読むフォルダと通信を閉じる、が実務の水準です。

理由は性能だけではありません。個人情報と秘密を置く場所を、所員の私用アカウントや普段使いのブラウザから切り離すためです。

水準どんなPCか向くこと向かないこと
1. 普段の業務ノート会計ソフトが入っているWindowsノート用途を絞った試し。クラウドAIのTeamプラン顧問先の原本フォルダを置くこと。所内LLMの本番
2. 所内専用の1台高性能なWindowsノート、または小型ワークステーション。Mac Studio等も選択肢少人数のテスト。指定フォルダだけの検索・要約・突合所員15人が同時に使うこと
3. 共有を増やす段階専用機を分ける。1台に全員を載せない確認者が複数いる本導入最初からこの規模で買うこと

会計事務所の標準端末はWindowsです。専用機としてMac Studioを置く案は残しますが、最初からMac専用にはしません。

提案時の概算(2026年5月、弁護士事務所向け面談資料)は、所内専用PC・ストレージ・周辺機器で100万円から、環境と文書まわりの初期構築で50万〜120万円、合計150万円からです。構成で変わります。この100万円は上限ではなく、専用機を置くときの下限の目安です。

公開記事のローカルLLMの費用感と現実解でも、費用は初期の機材と継続の保守の二層で見る、として金額の断定は避けています。GPUなど処理性能が応答速度を左右すること、用途を絞れば比較的小さな機材から試せる場合もあること、はそこに書いてあります。

測っていない数字は出しません。何Bのモデルが何秒で出るか、消費電力、中古相場は、この記事では扱いません。先に決めるのは、個人情報を置く専用機かどうか、同時に何人が触るか、です。

最初の1仕事は、証憑と通帳の突合

所内作業台の最初の仕事は、仕訳の自動確定ではありません。残高証明書、通帳、会計データを並べて、一致と不一致の候補を出すことです。

入力は、会計データのCSVやExcel、通帳PDF、残高証明書、証憑フォルダです。出力は、一致/不一致の候補と、確認が必要な行の印です。確定した仕訳を会計ソフトへ自動投稿しません。

すぐ後に足せる仕事は2つです。資料を読んで顧問先名・日付・書類種別のファイル名候補を出すこと。照会や催促のメール下書きを、所内データだけで作ること。どちらも、人が見てから動かします。

やらないことも先に書きます。自前モデルの学習。税務判断の自動化。TKC、freee、マネーフォワード、弥生の置き換え。精度保証。人の確認をなくす設計。

2026年9月時点では、導入支援とテスト受付です。インストールしてすぐ使える製品は、まだ出荷していません。

よくある失敗

  • 個人版ChatGPTに、同意もマスキングもなく顧問先名を入れる
  • Teamにしただけで、通帳PDFを上げてよいと誤解する
  • 守秘義務だけ見て、個人情報保護法27条・28条を見ない
  • 普段のノートにローカルLLMを入れ、私用アカウントと同じ机で原本を扱う
  • 所員15人で専用機1台を共有しようとする
  • 仕訳自動化から入って、現場が止まったままになる

よくある質問

Q. 個人版でも学習オフにすれば、個人情報を入れてよい? 推奨しません。学習に使わないことと、社外サーバーを通ること、国外移転、同意の要否は別です。業務で個人情報を扱うなら、Team以上の契約と所内ルールを先に置きます。

Q. 顧問先の同意があれば、クラウドAIに原本を入れてよいか? 同意はTKC方針でも原則です。ただし、何を、どの事業者の、どの国のサーバーに渡すかを説明した同意でなければ、形だけになりやすいです。原本の突合は、所内に残す判断もあり得ます。

Q. ローカルLLMなら個人情報は外に出ない? 構成を閉じれば、入力は所内で処理できます。周辺ツールが外へ通信しないかは、設置のときに確認します。「ローカル」という言葉だけで安心しない方がよいです。

Q. 普段のWindowsノートで足りるか? 試し打ちには足りることがあります。顧問先の個人情報と原本を置く本番は、専用機で見る前提です。会計事務所ならWindowsの専用1台からが標準です。

Q. 仕訳は自動化できる? 候補は出せます。確定とソフトへの投稿は人が行います。税務判断も自動化しません。

次の一歩

顧問先の個人情報を外に出せず、AI導入が止まっているなら、先に「入れてよい資料」と「所内に残す資料」を1枚に分けてください。所内に残す側の最初の1仕事は、突合で足ります。

進め方は、ローカルLLM導入支援に書いてあります。最初の1業務と、入力してよい/避ける線引きから整理したい場合は、AI顧問相談会(60分・無料)でも同じ問いから始められます。相談は売り込み前提ではなく、対象資料、禁止用途、確認者を先に決めます。

全体の地図は中小企業のAI活用ロードマップ、定着まで含めた研修の見方は生成AI研修が役に立たないときもあわせてご覧ください。

型を手に入れる。あるいは、共に超える。